Unionの「Braincell」。1995年リリースだから、最後期のOCS対応デモだ。
この作品は、AGA対応がメインで、OCSでも動作するという過渡期の作品なのである。従って、AGAモードで鑑賞した方が、滑らかで高解像度なのだが、レガシーAMIGAデモを専門に扱う当HPでは、敢えてOCSモードで掲載することとする。
後期のレガシーデモに共通して言えることだが、内容が極めて抽象的だ。初期の作品のような具体性は全く感じられない。とは言え、その意味不明な不思議さが、作品の魅力の一つとなっている。
また、AGAという解像度でも色数でも、OCSを遙かに上回るビデオ性能が既に一般化していた中で、敢えて前世代のチップセットを対象とするというのは、一見、屈折した表現手法だ。だが、ローレゾの粗削りなグラフィックスの中にこそ、AMIGAのメガデモの根源的なインパクトがあったと考えるならば、そうした表現も理解できる。
20年前においては、パソコンのグラフィックスはローレゾが当たり前で、キャラクタについても、ビットマップフォントのザラザラとした文字が普通であった。そんな折りに、Sunのワークステーションに搭載されたポストスクリプトフォントを見ると、あまりに滑らかで、かえって嘘くさい感じがしたものである。
デジタルという言葉に込められた粒子性という隠喩に反するものだったからかも知れない。もちろん、Sunと言えども、今となってはお話にならない解像度のディスプレイが附属していたのだが、それでも通常のPCのVGA画面とは格段に異なる解像度であった。
思うに、AMIGAというマシンそのものが、こうしたローレゾの制限を前提として構想されたものだったのだろう。そのような制約の中で、どれだけのグラフィックスとサウンドの表現を実現するかという目的から初期のメガデモが開発された。
だが、IBM系のPCの性能が飛躍的に向上し、互換機の価格が劇的に下がるに従ってカスタムチップセットの優位性という神話は徐々に崩れていった。皮肉なようだが、コモドール社の経営破綻は、A1200やA4000といったAGAマシンを発表したことが、そのトリガーとなっていたのかも知れない。
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