Impactが1994年に公開した「In A World of Ascii」。読んで字の如く、ASCIIのシングルバイトキャラクターだけを使ったデモだ。アイデア一発物ではあるが、最初にこれを見た時は、新鮮な感動を覚えたものだった。
この頃になると、レガシーのメガデモはあらん限りの技を駆使し尽くして、何となく閉塞感が感じられるようになって来ていた。時代は、既にAGAという新しいグラフィックス環境に移行し始めていたのであったが、メガデモの世界においては、未だOCSベースのものが主流を占めていたように思う。
それにしても、秀逸なグラフィックス性能を有するAMIGA上で、キャラクタベースのデモを作るという逆転の発想には、脱帽するしかない。今でこそ、顔文字全盛の世の中だが、ダブルバイトならいざしらず、シングルバイトキャラクターだけでこれだけ多彩な表現を実現するというのは、驚嘆に値するものであった。
とは言え、このことが即ちこの作品が突然変異的なものであることを意味している訳ではない。当時盛んだったAMIGA関係の海外BBSにおいては、こうしたキャラクターグラフィックスがトップ画面に表示されるのが常道だったからだ。電話回線の向こうからタラタラと送られて来るこうした画像を見るのは、なかなか趣深いものがあったものだ。
この作品は、そうした当時の貧弱な通信環境の中で、精一杯表現の幅を広げようとしていたBBSシスオペに対するオマージュと言えないこともない。
しかし、デモ本体は、キャラクターベースで統一されているのに、能天気なBGMとともに延々と続くエンドクレジットの背景には、これまた当時流行していたカオス写像が、こちらは真性のグラフィックスとして表示されている。クレジットテキストは、これまたタラタラとしたパソコン通信風だ。主客転倒というか、何ともウィットに富んだ逸品である。
コメントする